資金調達ラウンドとは?

特にスタートアップやベンチャー企業には、企業としての成長段階に応じた「ラウンド」というものがあります。ラウンドごとに適した資金調達の方法も異なり、これを「資金調達ラウンド」と呼びます。

資金調達ラウンドにはどのような段階があるのか、4つのラウンドを確認しておきましょう。

【資金調達ラウンドとは?】 ・シード期 ・アーリー期(シリーズA) ・ミドル期(シリーズB) ・レイター期(シリーズC)

 シード期

シード期とは、企業としての具体的な活動こそスタートしていないものの、アイデアの大枠は固まっている段階です。どんな事業を起こすのかが決まり、必要なメンバーや、集めたい資金の額が見えてくる時期です。

 アーリー期(シリーズA)

アーリー期(シリーズA)とは、新しい事業を起こすためのアイデアが固まり、企業としての活動をはじめた段階です。まだ利益はあまり出ていなくとも、製品を実際に提供しはじめ、大きな資金が必要になり始める段階です。資金調達の方法では、出資やクラウドファンディングが主になるでしょう。

 ミドル期(シリーズB)

ミドル期(シリーズB)とは、シリーズAでスタートした事業で、ある程度の利益が出始めた段階です。事業拡大のための資金調達が必要になる時期でもあり、出資に加え、融資も候補となってきます。

 レイター期(シリーズC)

レイター期(シリーズC)とは、安定して利益が出始め、企業としての経営体制が磐石になり始めてきた時期です。ここで一気に事業拡大を狙い、全国や海外への展開を考える企業も多いです。そのため、必要となる資金額も多く、大規模な資金調達が行われることもよくあります。

資金調達にはさまざまな方法がありますが、どの方法を選ぶかは、ここまで解説した「ラウンド」がひとつの目安となるでしょう。次からは、特にスタートアップやベンチャー企業におすすめな資金調達について、リスクや適したラウンドと併せて解説します。

補助金・助成金は、どのラウンドにも向く資金調達

「補助金・助成金」は、どのラウンドにも向く資金調達です。それ単体で考えるだけでなく、ほかの資金調達と組み合わせて使うものとも考えられます。いずれにしても、最初に検討したい方法なのはたしかです。

補助金も助成金も、国や自治体による事業者への支援制度です。支援の目的は企業を育て、経済を活性化させることであり、返済不要で資金調達ができます。

創業や事業拡大、雇用の維持、新しいシステムの導入など、さまざまなケースで活用できる方法です。そのため、ラウンドにかかわらず、まずは活用できる補助金・助成金を探すのが基本となります。

 補助金・助成金はほぼノーリスク

補助金・助成金はほかの方法と異なり、ほぼノーリスクでできる資金調達です。手続きや審査には手間と時間がかかりますが、そう莫大な時間がかかるわけでもありません。

審査に通るということは、その事業が国や自治体から認められたということでもあります。いわば公的機関からお墨付きをもらえるようなもので、受給自体が社会的信用アップにつながります。初期のラウンドでも補助金・助成金を活用したいのは、このような理由もあるからです。

ただ、補助金には予算が決まっていて、要件を満たしても受給できないことがあります。助成金は要件を満たせばほぼ確実に受給できるため、基本はこちらで考えることになるかもしれません。

出資は初期~中期ラウンドの資金調達に

「出資を受ける方法」は、初期~中期ラウンドの資金調達に向きます。出資をしてくれる投資家の目的は、未上場の企業の株式を安いうちに購入し、上場後に高く売ることです。株式売買の差益(キャピタルゲイン)が目的であるため、返済不要で資金調達ができます。

投資先が成長し、上場しなければ、投資家も利益を上げられません。そのため、投資先を成長させるためのアドバイスは惜しまずしてくれるでしょう。数々の企業を成功に導いてきた投資家からのアドバイスには、資金調達と同じくらいの価値があります。

 出資を受けるリスク

出資を受けることには、「自由に経営できなくなるリスク」があります。出資をしてくれた投資家は自社の株主でもあり、保有比率によっては強力な議決権を持つことになるでしょう。気をつけないと、経営権を握られることになりかねません。

投資家からのアドバイスも出資を受けるメリットではありますが、相性の悪い投資家が相手だと、「経営に口を出されている」と感じることもあります。

特に、個人で出資を行う「エンジェル投資家」を探すときは、自社との相性やビジョンへの理解度を重視するのが大切です。

また、投資家の目的は株式の売買差益(キャピタルゲイン)であるため、上場するつもりのない企業や上場済みの企業はこの方法を使えません。

融資は中期~後期ラウンドの資金調達に

「融資を受ける方法」は、中期~後期ラウンドの資金調達に適しています。銀行をはじめとする金融機関から資金を借り入れる方法で、出資と同じく、まとまった金額を調達できます。

金融機関の目的は「金利による利益」であるため、返済能力さえ示せれば、比較的容易に資金調達ができるでしょう。もちろん、そのための資料を作ったり交渉をしたりは必要ですが、出資を受けるよりは難易度の低い方法といえます。

シリーズB以降の、ある程度利益が出せるようになり、企業としての基盤が固まった時期からが、審査にも通りやすくなるでしょう。

 融資を受けるリスク

融資は資金を借り入れる方法であるため、調達した資金は返済しなければなりません。当然、それなりの金利もかかります。融資を受ける最大のデメリットは、返済や金利支払いの負担があることでしょう。

金利が高いと、その分自社の利益は減ってしまいます。返済期間をタイトに設定してしまうのも危険で、審査時は良くとも、ふとしたきっかけで売上が下がり、返済が滞ることも考えられます。

融資先を探すときはなるべく金利が低く、返済スケジュールの融通がきくところを探しましょう。

クラウドファンディングは初期~中期ラウンドの資金調達に

「クラウドファンディング」は、初期~中期ラウンドの資金調達に適しています。新しい商品やサービス(プロジェクト)をつくりたい起案者と、それを応援したい支援者を、インターネットを介してつなぐサービスです。支援者は資金提供を通じて、起案者とそのプロジェクトを応援します。

営利企業の資金調達には「購入型クラウドファンディング」というタイプが適しています。これは支援者の支援額に応じたリターン(見返り)を提供するタイプで、たいていの場合、プロジェクトでつくる商品やサービスそのものがリターンです。

「支援額に応じた商品やサービスを提供する」という性質は、インターネット通販に近い側面があります。実際、クラウドファンディングを「ちょっと変わったインターネット通販」の感覚で使う支援者も多いです。

この特性から、資金調達と同時にテストマーケティングも行えます。

 クラウドファンディングのリスク

クラウドファンディングはノーリスクの資金調達と思われがちですが、それなりのデメリットやリスクはあります。

まず、クラウドファンディングには「All or Nothing」と「All In」の2種類があり、どちらもどのくらいの資金を集めたいか目標額を設定します。

All or Nothingでは目標を達成できないと、それまで集まった資金も受け取れません。かけた時間と手間が水の泡になるリスクがあります。

All Inでは目標の達成・非達成にかかわらず集まった資金は受け取れますが、1円でも資金が集まった時点で、プロジェクトは成功とみなされます。こうなると、目標非達成でもプロジェクトは遂行しなければならなくなるのです。目標額(予算)に対して支援額が少なすぎると、資金不足でプロジェクトを強行することになりかねません。

いずれにしても、クラウドファンリングによる資金調達の成否は、魅力的なリターンを設定できるかで変わってきます。リターンの設定方法はこちらの記事で解説しているので、資金調達を考えている方はぜひ参考にしてください。

リターンを魅力的に見せるポイント&テクニック!クラウドファンディングの上手な使い方

資金調達はリスクを踏まえ、ラウンドに合った方法で

資金調達の中には返済不要のものも多く、中にはリスクがなさそうに見えるものもあります。しかし、補助金・助成金を除き、どんな資金調達にもリスクはあります。

また、どんな資金調達が適しているのかは、その目的や調達額に加え、自社のラウンドも判断基準となります。

資金調達をする際は、自社のラウンドに合った方法の中から、リスクも踏まえて最適なものを選びましょう。