起業時の資金調達に活用したいのが、国の制度である助成金と補助金です。審査に通れば、返済不要の資金が得られます。助成金や補助金ありきの資金計画を立てるのはおすすめしませんが、要件を満たすなら利用しない手はありません。今回はこれから事業を立ち上げる方に向けて、助成金と補助金に関する基礎知識をまとめました。
助成金・補助金とは
助成金と補助金は混同されやすい制度ですが、それぞれの違いを把握しておかないと自社の状況に合う制度を活用することができません。助成金と補助金の特徴を確認しておきましょう。
助成金と補助金の違い
助成金や補助金は、国や地方公共団体、民間団体などが定めた要件を満たす企業に対し、審査を経て採択された場合に一定額の資金を給付する制度です。どちらも返済は不要で、定められた経費のうち、一定の割合の資金が後払いで支払われます。
助成金は補助金に比べて審査のハードルが低く、基本的に要件を満たしていれば規定の金額が振り込まれます。一方、補助金は目的に応じて予算が決まっており、採択のハードルは高めです。
給付金との違い
補助金や助成金に対する理解を深めるために、給付金との違いも確認しておきましょう。給付金は国や地方自治体が支給するお金で、企業や事業主以外に、個人でも申請できるものが多いのが特徴です。給付金の多くは条件を満たしていれば、簡単な審査を経て決められた額が支給されます。
起業時に助成金・補助金を使うメリット・デメリット
起業時は開業資金や運転資金などが必要になるため、多くの事業主や経営者は少しでも資金にゆとりを持たせたいと考えるでしょう。起業時に助成金や補助金を利用すると、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
助成金のメリット
助成金の主なメリットは、以下の3つです。なお、これらは補助金にも当てはまります。
・返済不要で資金調達できる
助成金として振り込まれるお金は、返済不要です。原則後払いなので、先に必要な経費を支払う必要がありますが、トータルの出費を抑えることができます。特に助成金は、要件を満たした上で必要書類を提出すれば基本的に資金が給付されるため、補助金よりも資金計画に組み込みやすいでしょう。
・客観的な意見を聞ける
助成金を申請する際は、社会保険労務士や商工会議所などのサポートを受けるのが一般的です。支援を受ける中で、今後の自社の事業の参考になるアドバイスを得られる可能性があります。
・外部からの信用度が高まる
助成金を受給できたということは、国や地方自治体が定めた要件を満たしているということです。そのため、補助金や助成金を受けたという事実が対外的な信用度の向上につながることがあります。
助成金のデメリット
助成金には多くのメリットがありますが、以下のようなデメリットもあります。
・審査に落ちるリスクがある
助成金は、要件を満たしていれば審査に通りやすいといわれています。しかし、採択後に申請した取り組みが実施できなかった場合や、何かしらの虚偽が認められた場合などは助成金を受給できないことがあり、受給できても返還を請求されることもあります。特に採択されてから資金が振り込まれるまでの間は、定期報告書の提出や定期巡回の対応などを怠らないようにしましょう。
・基本的に後払い
助成金や補助金は、基本的に後払いです。受給するためには自社の取り組みを進める必要があり、それにはコストがかかるためキャッシュアウトが発生します。助成金ありきで事業計画を立てるのではなく、遂行したい事業計画の内容に合わせて利用できる助成金を探すことをおすすめします。
・書類作成にコストがかかる
助成金などの申請書類は多く、慣れていない人は作成に苦労するでしょう。専門家の申請サポートを受けることもできますが費用がかかるため、費用対効果を検討した上で依頼するべきです。
助成金・補助金を管轄している4つの団体
助成金や補助金を管轄している主な団体は、経済産業省、厚生労働省、地方自治体、民間団体です。これらの団体の概要と、管轄している助成金・補助金を紹介します。
経済産業省
経済産業省が管轄するのは、主に技術開発や環境問題への貢献などに関する取り組みに対する補助金で、ものづくり補助金や小規模事業者持続化補助金などがあります。審査通過の難易度が高く、公募期間も短いものが多いのが特徴です。
厚生労働省
厚生労働省は主に雇用の安定・増加や人材育成、能力開発の分野に関わる助成金を管轄しています。キャリアアップ助成金をはじめ、要件を満たせば受給できるものが多く、公募期間も長めです。
地方自治体
補助金や助成金は国が管轄するもの以外に、地方自治体も特色のあるものを展開しています。独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営している支援サイトJ-Net21で都道府県別に検索すると、各エリアを対象とした助成金・補助金が見つかります。
民間団体・企業
J-Net21で検索すると、例えば東京都では東京観光財団や東京しごと財団が行っている補助金・助成金が見つかります。このように民間団体や企業が行っているものもあるため、こまめにチェックすることをおすすめします。
起業時に利用したい助成金・補助金4選
これから起業する人が、特に利用しやすい助成金・補助金を4つ紹介します。いずれも全国が対象なので、どの都道府県で事業をするにしても、要件を満たしていれば申請できます。それぞれの制度の内容を見ていきましょう。
創業支援等事業者補助金
創業支援等事業者補助金は、国や地方公共団体が創業の際に必要な経費の一部を補助してくれる制度です。2018年度から「地域創造的起業補助金」という名称になっており、通称「創業補助金」と呼ばれています。
創業補助金は、基本的に返済不要です。ただし、補助金の支給後にある程度の収益が上がっている場合は、お金を返す必要があるケースもあるため注意してください。補助対象期間は6ヵ月で、後払いです。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者の販路開拓や生産効率向上のために使う経費の一部を支援してくれる補助金です。創業したばかりでも利用できるため、これから起業する人でも補助金の利用を視野に入れた事業計画を立てることができます。
商工会や商工会議所のサポートを受けながら経営計画や補助事業計画書を作成して補助金を申請するため、専門家から事業をブラッシュアップするためのアドバイスを得られる可能性があります。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、アルバイトやパートタイマーといった非正規雇用の労働者が、正規雇用の職に就きやすくするため助成金です。創業時に社員を雇用する際、非正規雇用の人を正社員として雇えば、国から助成金が支給されます。
地域中小企業応援ファンド【スタート・アップ応援型】
地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)とは、各都道府県の公共団体や金融機関、中小機構が共同出資した地域独自の官民ファンドです。このファンドを運営する会社に申請して事業が採択されると、ファンドの運用益から助成を受けることができます。
地域中小企業応援ファンドと農商工連携型地域中小企業応援ファンドがあるので、起業するエリアにこれらがあるかどうか確認してみましょう。
申請できる助成金・補助金を調べよう
起業の際に助成金・補助金の利用を検討している人は、まずは情報を収集して申請できるものがあるかどうか確認してください。J-Net21やミラサポPlusといった中小企業の支援サイトで検索したり、商工会や商工会議所で相談したりするとよいでしょう。助成金・補助金を申請する際は書類などを用意する必要があるため、早めにリサーチして行動を起こすことをおすすめします。以下の補助金・助成金診断ではたった1分であなたの会社がいくら受給できるかを診断できます。さらに面倒な申請や書類作成を着手金0円で代行してくれるサービスもあります。この際にぜひ診断してみてはいかがでしょうか。