オフィスのコストを削減するためには、まず固定費を見直すのが近道です。固定費削減の対象として、環境への配慮から最近注目されているのが節電です。節電に効果があるものの一つに「電子ブレーカー」の導入があります。この記事では、電子ブレーカーの実態や節電効果について詳しく解説します。
目次
電子ブレーカーとは?
「ブレーカー」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。ブレーカーとは、電気の流れを遮断するための装置のことです。では、一般的なブレーカーと電子ブレーカーは何が違うのでしょうか。設備の詳細について確認していきましょう。
電子ブレーカーとは
電子ブレーカーとは、実際に流れる電流値とその時間をコンピューターで制御し、JIS規格の許容最大まで使用できるように設計されたブレーカーのことです。メインブレーカーの容量で契約電力を決める主開閉器契約を組み合わせることで、電気基本料金を削減できます。
通常のブレーカーとの違い
通常のブレーカーは、2種類の金属の膨張率の違いで電気を遮断する「熱動式」と呼ばれる仕組みを採用しています。通常のブレーカーは動作が曖昧であり、例えば定格が40Aだとしても、それ以上の電流が流れてもすぐには遮断されません。実際、日本の工業製品に関する国家規格であるJIS規格の基準は「決められた時間内に遮断すればよい」となっています。
電子ブレーカーの導入に必要なものとは
電子ブレーカーを導入すると、通常は電気代の基本料金を10~20%、最大で50%近く削減できます。しかし、導入を決めてすぐに設置完了、というわけにはいきません。電子ブレーカーを設置する際に必要な段取りをまとめました。
低圧電力の契約の仕組み
電力会社の契約形態には、「高圧電力」と「低圧電力」があります。契約電力が50kW以上であれば高圧電力、50kW未満であれば低圧電力です。
高圧電力の契約は、大規模な商業施設やオフィスビル、工場など業務用の大型施設が中心です。一方で一般家庭のほか、業務用でも電気使用量が少ない施設であれば、低圧電力の契約対象になります。電気ブレーカーの導入は、低圧電力の契約が対象です。
低圧電力の契約は、さらに「従量電灯」と「動力プラン」に分かれます。従量電灯は一般家庭向きの契約で、動力プランは従量電灯よりも多くの電気を消費する業務用機器向けです。
業務用のエアコンや冷蔵庫、エレベーター、モーターなどを使用する場合は、動力プランを契約したほうがよいでしょう。工場などで多く使われている「三相200V」を使用し、コンセントが4つ穴であることが特徴です。電気ブレーカーは、低圧電力契約の中でも動力プランの場合のみ導入できます。
主開閉器契約が必要
電気の契約では、使用する電気容量を必ず決めます。電気容量の決め方には、「負荷設備契約」と「主開閉器契約」があります。それぞれの違いは以下のとおりです。
- 負荷設備契約:空調や機械などの設備容量の合計で電気量を決める
- 主開閉器契約:メインブレーカーのブレーカー容量(アンペア数)で決める
仮にブレーカー容量が30Aとすると供給電圧は200Vですから、以下の計算式のとおり契約容量は6kVAとなります。
30A×200V×1/1,000=6kVA
導入に必要な電力規模とは
電子ブレーカーを導入する際は、設備購入費を含めてコストがかかります。そのため、使用する電力量が少ない場合、節電効果によって期待できるコスト削減額よりも投資額のほうが高くつき、初期投資を回収できなくなります。電子ブレーカーで節電を行う場合は、15kW以上の電力を契約している施設に導入するとよいでしょう。
まとめると、以下の条件を満たす場合に電子ブレーカー導入によるコスト削減効果が期待できます。
- 低圧電力の動力プランを契約している
- 主開閉器契約を結んでいる(あるいは切り替える)
- 15kW程度の電力を使用している
電子ブレーカーの価格帯と電気代削減効果
前述のとおり、電子ブレーカーを導入する際は設備の購入費をはじめ、コストがかかります。具体的なコストと期待できる電気代削減効果について、より具体的な数字を確認してみましょう。
価格帯
電子ブレーカーを導入する際は、本体の購入費に加えて現地調査や工事も必要になるため、トータルで50万円程度かかります。一括払いで支払うこともできますが、リース契約にして削減した電気代をリース料の支払いに回すケースもあります。この場合、削減額と支払いのバランスから7年契約を結ぶのが一般的です。
電気代削減効果
電子ブレーカーを導入した場合のコスト削減効果は、契約電力量によって異なります。現在の契約電力が20kW前後であれば、基本料金は約半分になるでしょう。
運送業の倉庫(28kW)に電子ブレーカーを導入したところ、12kWまで使用電力を削減でき、年間20万928円の電気代を削減できた事例があります。年間10万円以上のコストを削減できるケースも珍しくありません。
電子ブレーカーの耐用年数は約10年なので、導入すれば毎月10万円×10年間、つまり100万円分のコスト削減効果が期待できます。
電子ブレーカー導入の流れ
電子ブレーカーを導入する際の流れは、以下のとおりです。
- 初回説明
- 現地調査
- 削減計画書提出
- 契約
- 設置工事
- 電力会社へ申請
- 電力会社の確認・検査
1から7までの期間は、長くても1ヵ月弱です。最短で1~2週間で導入が完了するでしょう。
電子ブレーカーの容量を判断するためには、現在の設備での電力使用量や使用時間を計測する必要があります。そのため、以下の資料を用意しましょう。
- 直近1年分の電気代の明細書
- 接続負荷のわかる結線図などの図面
- 設備一覧表
マクロニクス社製の「ECSブレーカー」がおすすめ
電子ブレーカー自体はJIS規格によって決められているため、どのメーカーのものを選んでも大差ありません。メーカーのサポート体制や部品供給のフォローといったポイントを重視するとよいでしょう。
その点で、マクロニクス社製の「ECSブレーカー」はおすすめです。マクロニクス社は東京都中小企業振興公社の中小企業ニューマーケット開拓支援事業の支援対象となっており、信頼の置けるメーカーといえます。
ECSブレーカーを導入し、施設全体の電力設備をコントロールすることで、効率的な電力利用を実現できます。
悪徳業者に注意して導入を検討しよう
電子ブレーカーはメーカーが直接販売しているケースは少なく、営業会社が販売を行うケースが大半です。そのため、商品知識が乏しい営業マンが強引な売り込みを行う事例もあります。悪質なケースだとアフターフォローをせず、売りっぱなしになることもあります。
業者を見分ける際のポイントは、商品の説明や事前調査を丁寧にやってくれるかどうかです。売上が発生する前の調査を丁寧に行い、顧客の利用状況に寄り添った提案をしてくれる業者は信頼できます。今回の記事を参考に、電子ブレーカーの導入による節電を検討してください。