CRMの主な機能
CRMの主な機能は次の通りです。
・住所や年齢など、顧客の基本情報の管理
・接点履歴の管理・共有
・人脈管理
・リード管理
・分析
・顧客の検索・抽出 など
これらの機能に加え、SFAとしての機能を備えているツールも多いです。
多くの企業がCRMを導入する背景
多くの企業がCRMを導入する背景には、社会や組織の変化があります。現代社会でビジネスを進めるうえでCRMが必要な理由を3つ紹介します。
価値観が多様化し、一人ひとりの顧客に合った対応が必要になった
多くの企業がCRMを導入する1つ目の背景として、「価値観が多様化し、一人ひとりの顧客に合った対応が必要になった」ことが挙げられます。
スマートフォンやSNSの普及により、消費者はほかの消費者がもつさまざまな価値観や考え方に触れられるようになりました。これにより社会全体で価値観の多様化が起こり、一人ひとりの消費者が何を重視するのか、何を求めているのかを知ることがより重要になりました。
以前の社会であれば機能や価格だけで勝負できていたかもしれませんが、現代では「企業や担当者への信頼感」「ビジョンへの共感」など、消費者から選ばれるための要素が複雑に絡み合うようになったのです。
一人ひとりに合った対応ができなければ、顧客からすぐに見限られてしまうでしょう。
口コミや評判が重視されるようになり、ロイヤルカスタマーの育成が不可欠となった
多くの企業がCRMを導入する2つ目の背景として、「口コミや評判が重視されるようになり、ロイヤルカスタマーの育成が不可欠となった」ことが挙げられます。
先述の通り、スマートフォンやSNSの普及により、社会の在り方が大きく変わりました。消費者は企業からの情報を一方的に受け取るのではなく、SNSやECサイトの口コミなどを見て、その企業やブランドが信頼できるかどうかをチェックしています。
消費者の目が肥え競争がシビアになったのはたしかですが、いい口コミさえ広めてもらえれば、商品やサービスが勝手に売れていく時代になったともいえます。
消費者から選ばれるためにも、マーケティングを加速するためにも、顧客からの信頼を得ることは重要です。そのために、顧客一人ひとりを理解し、関係を築いていくことは欠かせません。
社内に情報が点在し、共有や引継ぎに時間がかかっている
多くの企業がCRMを導入する3つ目の背景として、「社内に情報が点在し、共有や引継ぎに時間がかかっている」ことが挙げられます。
小さな町工場から始まった松下電器が日本有数の大企業・パナソニックへと成長したように、現代ではさまざまな組織が巨大化しています。中小企業であっても複数の支店や部署を持つのはもはや当たり前で、支店間・部署間の連携がより重要になりました。
CRMの多くはクラウドで提供され、インターネットを介して、時間も場所も問わずに情報を瞬時に共有できます。ビジネスではスピードがものを言う場面も多く、クラウド型のCRMを使って情報の共有と引継ぎを効率化する企業が増えているのです。
CRMと似たツールとの違い
CRMと似たツール、一緒に使われるツールとして、SFAやMAが挙げられます。これらはどんなツールで、CRMと何が違うのか、簡単に把握しておきましょう。
SFAとの違い
SFAは「Sales Force Automation」の略称で、日本語にすると「営業支援システム」となります。案件やリードの管理、日報の共有、営業チームや一人ひとりの営業担当者の管理・分析などができるツールです。
CRMとの違いは「どの部署で使うか」にあります。CRMには顧客ごとの契約情報が細かく記録されているため、営業部門はもちろん、経理やサポートなどの部署にとっても必要なツールです。SFAは営業特化の機能を中心に備えています。
ただ、最近はCRMとSFAの両方の機能を備えたツールも多いです。
MAとの違い
MAは「Marketing Automation」の略称で、その名の通り、マーケティング活動を自動化するためのツールです。具体的にはステップメールの自動配信や見込み客のスコアリング、Webサイト(LP)の構築・管理などの機能を備えています。
CRMが全部門、SFAが営業部門特化のツールであるのに対し、MAはマーケティング部門に特化したツールです。
ただ、マーケティング部門に入った問い合わせや申し込みを営業部門に引継ぎ、営業担当者がアプローチをかけるという企業も多いでしょう。そのため、MAとCRM・SFAはシームレスに連携できるもの同士を使うのが好ましいです。
CRMの活用で解決できる課題、導入メリット
CRMを活用することで「情報の共有や引継ぎに時間と労力がかかる」「データを営業やマーケティングに活かせていない」などの課題を解決できるでしょう。その理由を、CRM導入の3つのメリットと併せて解説します。
メリット1:一元管理による情報共有と引継ぎの効率化
CRMを導入する1つ目のメリットは、「一元管理による情報共有と引継ぎの効率化」です。
先述の通り、CRMには情報や年齢といった基本情報から購買・接点履歴まで、顧客のあらゆる情報が集約されます。クラウド型のCRMなら時間も場所も問わずにこれらの情報を確認でき、条件を指定して顧客を検索・抽出することもできます。
この一元管理により情報の共有と引継ぎが容易になり、業務効率化や部門間の連携強化につながるでしょう。
メリット2:情報の整理・抽出が容易でリテンションや営業に活かしやすくなる
CRMを導入する2つ目のメリットは、「情報の整理・抽出が容易でリテンションや営業に活かしやすくなる」ことです。
CRMには購買の履歴や時期、これまでの問い合わせやクレームなどの内容を細かく記録できます。これらの情報を確認・分析することで、一人ひとりの顧客の特性がわかり、より戦略的なアプローチができるようになるでしょう。
また、顧客の属性や特性などを分析することで、「どんな顧客にどんなアプローチが刺さるのか」も見えてきます。
CRMとそこに蓄積されたデータを活用することで、既存顧客へのリテンションにはもちろん、新規開拓の戦略も立てやすくなるでしょう。
メリット3:他部門との連携が容易になり、解約抑止・満足度向上が狙いやすくなる
CRMを導入する3つ目のメリットは、「他部門との連携が容易になり、解約抑止・満足度向上が狙いやすくなる」ことです。
先述の通り、CRMには顧客一人ひとりの接点履歴を細かく記録できます。これまでのクレームはもちろん、誰が・いつ・どのような対応をしたのか、それにより顧客からどんな反応が返ってきたのかも、情報を記録してさえおけばすぐに確認できます。
これにより、営業部門とサポート窓口との連携が容易になり、解約抑止や満足度向上が狙いやすくなるでしょう。データ分析により解約リスクの高い時期・顧客を割り出し、最適なタイミングでアフターフォローをすることも可能です。
CRMの選び方を導入フローに沿って解説
CRMの導入効果を最大化するには、自社に合ったツールを選ばなくてはなりません。機能や価格はもちろん、連携させたい既存システムや自社の規模、従業員の知識レベルなど、CRMにはさまざまな選定ポイントがあります。
自社に合ったCRMを選ぶにはどうすればいいのか、導入フローに沿って解説します。
Step1.まずは自社の課題と目的を明確にする
Step2.自社に必要な機能・タイプを見極める
Step3.機能ベースで導入候補をピックアップ
Step4.既存システムとの連携を確認
Step5.セキュリティ対策とサポート体制を確認
Step6.料金の形態や金額で候補を比較
Step7.トライアルや無料プランで操作感をチェック
Step1.まずは自社の課題・目的を明確にする
どのCRMを導入するのか考える前に、まずは自社の課題と目的を明確にしましょう。CRMを使って何がしたいのか、どんな問題を解決したいのかを考えるのです。
たとえば営業力を強化したいなら、CRMとSFAの両方の機能を備えたものがいいでしょう。ひとまず顧客情報の整理ができればいいというなら、シンプルな機能のものを、コストを抑えて導入するのもいいかもしれません。
Step2.自社に必要な機能・タイプを見極める
自社の課題や目的が明確になれば、そのためにどんな機能が必要なのか、どのタイプのツールが合っているのかも見えてきます。
先述の営業力を強化したいケースではCRM単一ではなく、CRM/SFAとして開発されたツールがおすすめです。既存顧客へのリテンションや解約抑止だけでなく、新規開拓にも力を入れていきたいなら、案件・リード管理機能のあるものがいいでしょう。
Step3.機能ベースで導入候補をピックアップ
必要な機能が見えてきたら、まずは機能ベースで導入候補をピックアップしましょう。自社に必要な機能をそろえたCRMをピックアップし、一覧にするのです。そのうえで、価格やサポート体制、既存システムとの連携などを確認します。
なお、「機能は多ければ多いほどいい」と思うかもしれませんが、必ずしもそうではありません。機能が多いほど価格も割高になりやすいです。使わない機能(メニュー)が多いと操作画面が見づらくなり、使い勝手が悪いと感じるかもしれません。
Step4.既存システムとの連携を確認
導入候補をピックアップしたら、既存システムとの連携を確認しましょう。特に既存のSFAやMAとの連携について詳しく確認したいです。
ここでは単に「データ連携ができるか」だけでなく、「どのくらいスムーズに連携できるのか」を確認しましょう。
たとえばMAからCRM/SFAへの情報連携が遅いと、マーケティング部門から営業部門への引継ぎも遅くなり、アプローチのタイミングを逃してしまいかねません。事実、MAとCRM/SFAの連携強化を図り、情報共有のタイムラグをなくしただけで、アポ数が2倍になった企業もあります。
Step5.セキュリティ対策とサポート体制を確認
CRMは顧客情報を扱うツールであり、万が一にでも情報漏えいが起こってはいけません。どのようなセキュリティ対策を取っているのか、信頼できる企業が開発・運営しているのかを確認しましょう。
また、いざというときや困ったときのサポート体制についても確認しておきたいです。トラブルが起きたときにどんな方法で、どのくらいの範囲まで対応してくれるのか。疑問や不安はどこに問い合わせればいいのか、導入や運用支援はどのくらい充実しているのかなどをチェックしましょう。
Step6.料金の形態や金額で候補を比較
機能ベースでピックアップしたたくさんの導入候補も、既存システムとの連携やセキュリティ対策・サポート体制などのチェック項目でふるいをかけ、数がかなり絞られてきたのではないでしょうか。
CRMのような重要なツールは価格ではなく、機能や使いやすさ、いざというときの安心感で選ぶべきです。価格での比較・検討は、この段階に来て始めて行うのがいいでしょう。
ツールごとの価格を比較するときは、料金の金額だけでなく「形態」にも注目します。買い切り制なのか月額制なのか、月額制だとして料金は固定なのか、ユーザー数により変動するのかなどを確認し、自社にとってお得なツールを選びましょう。
Step7.トライアルや無料プランで操作感をチェック
CRMはさまざまな部門で使うツールです。どの部門、どの社員にとっても使いやすいツールを選べなければ、教育コストがかかったり、そもそもツールが使われなかったりということも考えられます。
トライアルや無料プランがあるCRMも多いです。導入を決める前に、まずはトライアルや無料プランでそのツールを実際に使ってみましょう。実際に使ってみることで、機能の過不足がないか、操作感はどうなのかなどがわかります。
自社に合ったCRMを活用し、ロイヤルカスタマーを育てよう
CRMをうまく活用することで、顧客とより良い関係を築くことができます。顧客との関係が良くなれば解約率の軽減や客単価アップにつながり、LTVも大きくなるでしょう。
自社のファンともいえるような顧客が増えていけば、ポジティブな口コミが広まり、何もしなくても新規契約が増えていく好循環も起こり得ます。
そのためには、自社に合ったCRMを導入し、積極的に活用していくことが大切です。
まずは機能や既存システムとの連携、セキュリティ対策、サポート体制などの項目から、自社にとって使いやすそうなCRMをピックアップしましょう。最終判断を下す前に、トライアルや無料プランで「社員にとっての使いやすさ」を確認することも忘れずに。