小規模企業共済が危ないってホント?メリット・デメリットや加入手続きを徹底解説
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小規模企業の経営者や個人事業主らのための退職金積み立て制度「小規模企業共済」。節税や資金調達にも活用できるため、近年ではさまざまなメディアでメリットが紹介されています。

一方で、「小規模企業共済は危ない」「元本割れのリスクがある」など、ネガティブな声を上げる人も。そこで本記事では、小規模企業共済のメリットやデメリット、注意点などを徹底的にまとめました。

加入手続きについても解説しているので、小規模企業共済に興味がある方はぜひ最後までチェックしてみてください。

目次

  1. 小規模企業共済とは?
  2. 小規模企業共済に加入する6つのメリット
  3. 小規模企業共済のデメリット・注意点とは?
  4. 小規模企業共済に加入する4ステップ
  5. 小規模企業共済の加入前には運用プランを考えておこう

小規模企業共済とは?

小規模企業共済は、中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する積み立てによる退職金制度です。掛金を一定期間以上払い込むと、それまでの積み立て額に応じた退職金が廃業時などに給付されます。

1965年に創設されて以来、小規模企業共済は全国の経営者や役員、個人事業主から利用されてきました。2021年3月時点では153万人が加入しており、さまざまなメリットを受けながら資産形成ができる制度として、今なお注目されています。

小規模企業共済の加入資格

小規模企業共済には、次のような加入資格が設けられています。

○小規模企業共済の加入資格
① 常時使用する従業員数が20人以下の個人事業主、または会社等の役員(建設業、製造業、運輸業、宿泊業、娯楽業、不動産業、農業などを営む場合)
② 常時使用する従業員数が5人以下の個人事業主、または会社等の役員(卸売業、小売業、宿泊や娯楽以外のサービス業を営む場合)
③ 事業に従事する組合員が20人以下の企業組合の役員
④ 常時使用する従業員数が20人以下の協業組合の役員
⑤ 常時使用する従業員数が20人以下の農事組合法人の役員(農業の経営を主として行っている場合のみ)
⑥ 常時使用する従業員数が5人以下の士業法人の社員
⑦ 上記①または②に該当する個人事業主の共同経営者(2人まで)

(※上記のいずれかに該当すれば加入可能)

簡単に言えば、小規模企業共済は退職金を自分で用意できない事業者や役員を対象にした制度です。なお、医療法人やNPO法人をはじめとして、加入対象外の業種や法人も存在するため、詳しくは中小機構の公式サイトで確認しておきましょう。

小規模企業共済に加入する6つのメリット

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小規模企業共済は、単に掛金を積み立てるだけの制度ではありません。ほかにもさまざまな加入メリットがあるため、ここからは制度の仕組みと併せて解説します。

退職金をさまざまな方法で受け取れる

小規模企業共済で積み立てた掛金は、廃業以外にもさまざまなタイミングで受け取れます。

受け取れるお金の種類法人の役員個人事業主
共済金A・法人が解散した場合・事業を廃業した場合
・共同経営者が亡くなった場合
共済金B・病気やケガなどを理由に退任した場合
・共済契約者が亡くなった場合
・65歳以上になった場合(掛金の払い込みが180日以上)
・65歳以上になった場合(掛金の払い込みが180日以上)
準共済金・病気やケガ、解散以外の理由で、65歳未満で退任した場合・法人成りによって加入資格がなくなった場合
解約手当金・任意に解約した場合
・掛金の滞納によって機構解約(※)された場合
・任意に解約した場合
・掛金の滞納によって機構解約された場合
(※)12ヵ月以上の滞納で機構解約の扱いになる。

上記の通り、小規模企業共済では退職や廃業以外にも、病気やケガ、任意解約などをきっかけに退職金を受け取れます。

246ヵ月以上の積み立てで任意解約の返戻率が100%を超える

上記のうち任意解約による解約手当金は、掛金を支払った月数によって返戻率が決められています。

掛金を支払った月数返戻率
12ヵ月未満0%
12ヵ月~84ヵ月未満80.00%
84ヵ月~90ヵ月未満80.50%
90ヵ月~96ヵ月未満81.25%
96ヵ月~240ヵ月未満6ヵ月ごとに0.75%増加
240ヵ月~246ヵ月未満100.00%
246ヵ月~252ヵ月未満100.25%
252ヵ月~258ヵ月未満100.50%
258ヵ月~468ヵ月未満6ヵ月ごとに0.25%増加
468ヵ月~474ヵ月未満109.50%
474ヵ月~480ヵ月未満109.75%
480ヵ月以上6ヵ月ごとに0.25%増加(※120%が上限)

上の表を見ると分かるように、掛金を246ヵ月以上支払えば、仮に任意解約をしても返戻率が100%を超えます。また、最大では掛金の120%の退職金が給付されるため、長期的に運用すれば大きなメリットを実感できるでしょう。

掛金全額が所得控除の対象になる

小規模企業共済で支払った掛金は、その全額が所得控除の対象になります。法人の場合も経費として処理できるため、高い節税効果を得ながら退職金を積み立てられます。

なお、個人型確定拠出年金の「iDeCo(イデコ)」も特徴が似ている制度ですが、iDeCoは原則として途中解約が認められないため、退職金ではなく老後資金の積み立てとして活用されています。

掛金を自由に設定できる

小規模企業共済の掛金は、毎月1,000円~7万円の範囲内で自由に設定できます。増額・減額は500円単位であり、もちろん加入後の金額変更も可能です。

さらに、一時的に支払えなくなった場合は掛け止め(※)もできるため、どのような方でも無理のない範囲で積み立てられるでしょう。

(※)解約をしない状態で、一時的に掛金の支払いを停止すること。

受け取り方法によっては退職所得控除が適用される

小規模企業共済では以下の受け取り方法を選ぶと、受け取った資産が退職所得として扱われます。

○退職所得扱いになる受け取り方
・共済金または準共済金を一括で受け取る
・共済金を一括と分割併用で受け取る(※一括分のみ退職所得扱い)
・65歳以上になってから任意解約する
・65歳以上になってから共同経営者が任意退任する
・法人成りに伴って解約手当金を受け取る

上記のケースでは、通常の退職金と同じく「退職所得控除」が適用されるため、さらに大きな節税効果を得られるでしょう。

貸付制度を利用できる

小規模企業共済の加入者には、積み立てた範囲内で融資を受けられる「貸付制度」が用意されています。

貸付制度の種類概要
一般貸付制度事業資金を緊急時に借入できる制度。
傷病災害時貸付け病気やケガ、災害による被害などで経営が傾いた場合に、事業資金を借入できる制度。
創業転業時・新規事業展開等貸付け新規事業や転業、事業多角化の際に必要資金を借入できる制度。
廃業準備貸付け廃業準備(会社の解散など)に必要な資金を借入できる制度。
緊急経営安定貸付け資金繰りが困難になった場合に、経営の安定化を図るための事業資金を借入できる制度。
福祉対応貸付け福祉にかかる住宅改造資金や、機器購入資金を借入できる制度。
事業承継貸付け事業承継にかかる資金を借入できる制度。

上記はいずれも低金利の貸付制度なので、災害などの緊急時には心強い存在になります。即日貸付けにも対応しているため、ケースによっては貴重な資金調達手段になるでしょう。

小規模企業共済のデメリット・注意点とは?

一方で、小規模企業共済には以下のデメリット・注意点があります。

支払い月数が6ヵ月未満の場合は掛け捨てになる

小規模企業共済では、掛金の支払い月数が6ヵ月を超えない限り共済金A・共済金Bを受け取ることができません。仮に3ヵ月以内に解約した場合は、退職や廃業などの条件を満たしても全額が掛け捨てになってしまいます。

また、準共済金と解約手当金については、掛け捨てのラインが「12ヵ月未満」に設定されています。つまり、これらを受給するには1年以上の支払いが必要になるため、加入前には中長期の運用プランを立てておきましょう。

元本割れのリスクがある

小規模企業共済では、掛金の支払い月数が240ヵ月を超えないと元本割れを起こします。つまり、少なくとも20年は積み立てる必要があるので、あくまでも無理のない範囲で掛金を設定することが重要です。

なお、掛金の減額や掛け止めは可能ですが、減額している最中は「掛金の支払い月数」にカウントされません。

受取時に課税される

小規模企業共済で受け取る共済金や解約手当金には、通常の所得と同じ税金がかかります。受け取り方法によっては退職所得控除が適用されるものの、控除分を超えた金額は所得税または住民税の対象になります。

また、以下の受け取り方法を選んだ場合は、退職所得控除も適用されません。

○退職所得控除が適用されない受け取り方法
・共済金を分割で受け取る(雑所得扱い)
・65歳未満のタイミングで任意解約する(一時所得扱い)
・65歳未満の共同経営者が任意退任する(一時所得扱い)
・機構解約によって解約手当金を受け取る(一時所得扱い)
・遺族が共済金を受け取る(みなし相続財産)

積み立て時の掛金は全額が所得控除の対象になると先に述べましたが、もし上記の方法で共済金などを受け取ると、実質的には単に課税を先送りにしている状態になります。つまり、iDeCo(※)のような節税メリットは発生しないため、受け取り方法や解約のタイミングは慎重に判断しましょう。

(※)iDeCoでは、受給時に退職所得控除または公的年金等控除が適用される。

小規模企業共済に加入する4ステップ

ここからは、小規模企業共済に加入する流れを紹介します。申込人の状況や属性によって必要書類などが異なるため、その点に注意しながら確認してください。

【STEP1】必要書類を準備する

まずは、窓口に提出するための必要書類を準備します。申込人によって必要書類が異なるので、一つずつ確認しながら準備を進めましょう。

個人事業主の必要書類・契約申込書
・預金口座振替申出書
・確定申告書の控え
・開業届の控え(※確定申告書がない場合)
法人役員の必要書類・契約申込書
・預金口座振替申出書
・役員登記が確認できる書類(履歴事項全部証明書など)
共同経営者の必要書類・契約申込書
・預金口座振替申出書
・確定申告書の控え
・開業届の控え(※確定申告書がない場合)
・共同経営契約書の写し
・報酬の支払い事実が確認できる書類(青色申告決算書など)
(※上記はいずれも原本が必要)

契約申込書と預金口座振替依頼書については、中小機構の資料請求ページまたはコールセンターから請求します。なお、コールセンターは平日のみの対応であり、特に休み明けは電話が込み合うこともあるので、お急ぎの方はWeb上の資料請求ページから請求しましょう。

【STEP2】様式書類に必要事項を記入

中小機構から書類が届いたら、契約申込書と預金口座振替依頼書に必要事項を記入します。いずれの書類にも細かく案内が書かれていますが、もし記入に迷った場合は公式サイトで公開されている記入例を参照しましょう。

なお、共同経営者として加入する場合は、個人事業主の署名と捺印が必要になります。

【STEP3】窓口で申し込む

小規模企業共済では郵送による手続きを受け付けていないため、以下のいずれかの窓口に出向く必要があります。

委託団体代理店
・商工会
・商工会議所
・中小企業団体中央会
・事業協同組合
・青色申告会
・損害保険ジャパン株式会社
・アクサ生命保険株式会社
・都市銀行
・信託銀行
・地方銀行
・第二地方銀行
・信用金庫
・商工組合中央金庫
・農業協同組合

民間銀行でも手続きは可能ですが、インターネット専業銀行や外資系銀行のように窓口がない銀行もあります。また、農業協同組合についても一部は対応していないため、足を運ぶ前に窓口の有無を調べておきましょう。

【STEP4】書類を受け取って完了

窓口の案内に従って手続きを進めると、中小機構による審査が実施されます。審査で特に問題が見当たらない場合は、申し込みから約40日後に『小規模企業共済手帳』と『小規模企業共済制度加入者のしおり及び約款』が届きます。

この2つの書類が届いたら、小規模企業共済への加入は完了です。なお、審査に落ちた場合は約2ヵ月後に通知が届き、申し込み時に支払った現金は指定の口座に返還されます。

小規模企業共済の加入前には運用プランを考えておこう

小規模企業共済には元本割れのリスクがあるものの、上手に運用すれば節税しながら退職金を積み立てられます。ただし、退職金の受け取り方によって節税効果は変わってくるので、加入する前に全体の運用プランを考えておきましょう。

また、加入手続きもやや複雑なので、本記事を参考にしながらスケジュールを立てることをおすすめします。