InstagramやYouTubeが流行した影響で、多くの企業が動画マーケティングに力を入れています。テキストや画像にはない訴求力があるため、マーケティングに動画をとり入れるだけで集客やブランディングの幅を広げることができます。
本記事では、そんな動画マーケティングのメリットやデメリット、手法などを事例付きでまとめました。中小規模のビジネスにも効果があるので、これを機に基本的なポイントを押さえていきましょう。
目次
動画マーケティングってそもそも何?注目されている背景
動画マーケティングとは、映像コンテンツやアニメーションを使ったマーケティング手法のこと。テキストや画像に比べると、動画コンテンツは視覚的・聴覚的な情報量が圧倒的に多いため、短時間で会社や商品・サービスの魅力を伝えられます。
インターネットやスマートフォンの普及により、マーケティングの手法は日々変化を遂げてきました。そんな中、動画マーケティングが注目された背景としては次の要因が挙げられます。
○動画マーケティングが注目された背景
・動画投稿サイト(アプリ)の人気
・ストリーミングサービスの台頭
・通信の高速化(5G通信など)
・コロナ禍による巣ごもり需要の増加 など
動画広告市場の規模は年々拡大しており、2020年には3,000億円に迫る規模にまで成長しました。サイバーエージェントが実施した「国内動画広告の市場動向調査」によると、2025年には1兆円規模を超えると予測されています。
動画広告市場の拡大はしばらく続く可能性が高いため、経営者・事業主の方は早めに知識をつけておく必要があります。
動画マーケティングのメリット
動画マーケティングはすでに多くの企業が導入しており、特に以下の業界ではその傾向が顕著に表れています。
○動画マーケティングがよく活用されている業界
・IT系
・飲食店
・製造メーカー
・自動車の販売
・化粧品などの美容系
・ファッション関連
・住居などの不動産
・保険やクレジットカード
・インテリアや家具 など
なぜさまざまな業界が導入しているのか、ここからは動画マーケティングのメリットを解説します。
訴求力が高く記憶に残りやすい
動画コンテンツは、見る人の視覚と聴覚に訴求できるため、テキストや画像に比べると記憶に残りやすい特徴があります。
制作に手間はかかりますが、インパクトの強いコンテンツは短時間でも成果を得られるので、最近では5~10秒程度の動画広告も増えてきました。
拡散される可能性が高い
動画コンテンツは視聴者の関心を引きやすいため、SNSなどで広く拡散される可能性があります。その拡散力は、一般的なブログ記事や製品ページの2倍とも言われています。
多くのスマホユーザーがSNSを利用している中、情報の拡散性にこだわることは非常に重要です。制作した動画が広く拡散されれば、商品・サービスの認知だけではなくブランディングにもつながるでしょう。
ストーリーや細かいニュアンスを伝えやすい
テキストに比べると、動画コンテンツでは多彩な表現が可能です。複数の動画をつなぎ合わせたり、被写体の角度を変えながら撮影できたりするため、ストーリーや細かいニュアンスまでしっかりと伝えられます。
サービスによっては動画制作のサポート機能が用意されている点も、初心者にとっては心強いポイントでしょう。
効果検証が容易
視聴数や総再生時間などの効果検証が容易な点も、動画マーケティングならではのメリットです。掲載先のサービスによっては、1人あたりの平均視聴時間やCV率(※)なども簡単に分析できます。
分析結果をもとに改善を繰り返せば、低予算でも効果の高い広告を作成できるでしょう。
(※)成果達成率。購入や資料請求、問い合わせなどの最終的な成果を達成した割合のこと。
動画マーケティングのデメリット
動画マーケティングは多くの業界で活用されていますが、万能な手法ではありません。特に以下で紹介するデメリットは、深刻なリスクや失敗につながる恐れがあるので注意が必要です。
制作に手間や時間がかかる
訴求力のある動画コンテンツを制作するには、撮影の後に編集作業を行う必要があります。文字やエフェクトを入れたり、不要な部分を削ったりする作業が必要になるので、ある程度の手間は覚悟しなければなりません。
撮影方法や編集内容によっては、専門的な知識・スキルが求められます。あまりにもハイクオリティーなものを目指すと、本業が疎かになってしまう恐れもあるため、計画段階で動画の完成像をイメージしておきましょう。
外部に依頼するとコストが膨らむ
撮影・編集のスキル不足については、制作会社に依頼する方法でカバーできます。しかし、撮影費や編集費が発生するため、どうしてもコストが膨らんでしまうでしょう。
あまりにも多くのコストが発生すると、いくら売上が増えても費用対効果を高めることができません。専門のスタッフを新たに雇用する場合も、人件費や採用コストが発生するので注意しておきましょう。
作り直しや修正が難しい
他の広告形態に比べると、動画コンテンツは作り直しや修正が難しい傾向にあります。編集である程度の調整は可能ですが、もともとの動画素材(撮影した動画)に魅力がなければ、訴求力の弱いコンテンツになってしまうでしょう。
配信した動画の内容によっては、意図せず悪評が広まってしまうリスクもあります。特にSNS上で広がったイメージは払拭が難しいので、動画の内容は慎重に考えましょう。
動画マーケティングの5つの方法
動画マーケティングにはさまざまな方法があり、それぞれ効果やコスト、リスクなどが異なります。ここからは基本的な5つの方法をまとめたので、自社にとって成功率がより高いものを見極めていきましょう。
①動画広告の出稿
手っ取り早い方法としては、広告出稿サービスの利用が挙げられます。サービスによって掲載先は異なりますが、最近ではTwitterをはじめとしたSNSへの掲載が主流です。
短期間で効果を見込める方法ではありますが、出稿を成功させるにはターゲット層への的確なアプローチが欠かせません。掲載先によってユーザー層や好まれる動画は異なるので、各サービスの特徴をしっかりと比較しておきましょう。
②自社サイトへの埋め込み
製品ページやランディングページ(※)など、自社サイトに動画を埋め込む方法も一つの手です。主なメリットとしては、広告出稿サービスのような広告費がかからない点、CV(購入や問い合わせなど)につなげやすい点などが挙げられます。
ただし、自社サイトを訪れるネットユーザーは、その多くが顕在層にあたります。つまり、すでに関心をもっている顧客がメインターゲットになるため、その点を意識してコンテンツを考えましょう。
(※)WEB広告をクリックした後に表示される、商品やサービスの紹介に特化したWEBページのこと。
③SNSでの発信
すでに多くのフォロワーを獲得している場合は、自社SNSでの発信も選択肢になります。多くのSNSには拡散機能が備わっているため、訴求力の高いコンテンツを発信すれば、爆発的に視聴者数が増えることも考えられます。
SNSでの動画マーケティングを成功させるには、アカウントを育てて拡散力を高めることが重要です。サービスによってユーザー層が大きく異なるので、動画の内容や長さを意識して、各シーンに最適なSNSを選ぶようにしましょう。
④メルマガでの配信
固定ファンとコミュニケーションを図るために、メルマガ内で動画コンテンツを配信するケースも見られます。興味・関心を集めるコンテンツを配信すれば、商品・サービスの売上アップに加えて、顧客満足度の向上にもつながります。
ただし、メルマガは登録ユーザーにしか届かないため、潜在層へのアプローチが難しい欠点があります。潜在層を取り込むには、クーポンやキャンペーンなどをうまく活用して、登録者自体を増やす必要があるでしょう。
⑤インフルエンサーの活用
インフルエンサーとは、世間に対して強い影響力をもっている人物のこと。インフルエンサーが登場する動画は拡散されやすいので、多くの企業がインフルエンサーとタッグを組み、SNSを通じて商品やサービスの情報を発信しています。
インフルエンサーを活用する場合は、ターゲット層から人気のある人物を選ぶことが大切です。また、露骨なプロモーションは煙たがられる傾向があるので、単に商品やサービスを宣伝するだけではなく、視聴者を楽しませる企画や工夫もとり入れましょう。
マーケティングの方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
動画広告の出稿 | ・短期間での効果が見込める ・多くの人に見てもらえる ・効果測定が容易 |
・費用がかかる ・サービスの比較が必要 |
自社サイトへの埋め込み | ・コストを抑えやすい ・手間がかかりにくい ・CVにつなげやすい |
・視聴数が伸びにくい ・潜在層へのアプローチが難しい |
SNSでの発信 | ・拡散力が高い ・ターゲットを絞りやすい ・アカウントの成長にもつながる |
・フォロワーが少ないと効果を期待できない ・アカウントの成長に時間がかかる |
メルマガでの配信 | ・顧客満足度の向上につながる ・手軽に実践できる ・CVにつなげやすい |
・視聴数が伸びにくい ・潜在層へのアプローチが難しい |
インフルエンサーの活用 | ・拡散されやすい ・イメージアップにつながる ・CVにつなげやすい |
・費用がかかる ・企画力や工夫が求められる |
上記のように、どのマーケティング手法にもメリット・デメリットの両面があります。商品・サービスによって適した方法は変わるため、最終的な目標・目的をイメージしながら、費用対効果が最も高いものを選びましょう。
事例から学ぶ動画マーケティングのポイント
動画マーケティングにはさまざまな形があるため、実際の事例を見てイメージを膨らませることが大切です。ここからは、中小企業経営者や個人事業主が参考にしたい3つの事例を紹介します。
【事例1】金属の加工過程を動画化/タカチ電機工業
測定器や通信機器などのメーカー『タカチ電機工業』は、金属の加工動画をYouTubeにアップしています。動画には切削加工やレーザー加工の様子が収められており、作業のスピード感や精密性をうまくアピールしています。
製造過程を動画化するアイデアは、飲食店や工務店なども参考にできるでしょう。正確かつスピーディーな作業工程を動画にできれば、技術力や信頼性のアピールにつながります。
【事例2】臨場感を演出するBGMや効果音/リーガロイヤルホテル
関西でホテル事業を営む『リーガロイヤルホテル』は、厨房の調理工程を動画化したマーケティングに取り組んでいます。
この事例で参考にしたいポイントは、シーンに合わせたBGM・効果音が使われているところ。例えば鉄板焼きの動画では、厳かな雰囲気のBGMを流すことで、調理の臨場感が巧みに表現されています。
このようなイメージ作りはブランディングにもつながるので、映像と音声の組み合わせは慎重に考えましょう。
【事例3】ターゲット層を意識したタクシー広告/Video Brain
BtoBサービスを提供する『Video Brain』は、タクシーの車内(サイネージ)で流す動画広告を制作しています。
BtoBサービスの営業先は企業であるため、ビジネスマンがよく乗車するタクシーは効果的な配信先です。大きな音を出せない点はデメリットですが、同社はすべてのセリフに字幕をつけることで、配信環境に合わせた広告を制作しました。
動画広告は配信先によって見え方や聴こえ方が変わるため、その点を意識して全体の構成を考えることも重要なポイントです。
早めに動画マーケティングの検討を
動画マーケティングの市場規模は拡大する可能性が高く、将来的にはさらに多くの業種で活用されることが予想されます。そのため、早いうちに導入しておかないと、業界内で乗り遅れてしまう可能性があるでしょう。
競合と差別化を図りたい企業、マーケティングの幅を広げたい事業主などは、これを機に動画マーケティングの導入を検討してみてください。